イインジャー      By  Blue - μ
  第4回

さて、運命のジャッジメント。菊太郎の洗脳である。
禿頭の大河原院長がニコニコしながら話し始めた。
「おおっキーちゃん。おっと、『イエロー』じゃったな。
おまたせ。じゃはじめようか。」

機械がセットされていく。大丈夫と、
モモがウインクしてくれたものの、
やはり怖い洗脳マシーンである。
耳栓だけで効かないという、確証は何もないのだから。

「ビーーーン。」と低く低周波が耳元に流れてきた。

あーーーーっ。
不快なものと思っていたのに、それはそれは、
とても心地よい、ものであった。

心安らぐ音楽に乗って気持ちよくなっている。
その音楽にのって、
「ヒーローになろう。ヒーローになろう。
ヒーローはかっこいいぞーー。
正義の心で悪をやっつけよーーう。」
というイメージが注ぎ込まれてくるのである。

抵抗してやると、
言う気持ちで考えていた、菊太郎にとって、
この心地よさは、予想外のものであった。
「あーーー。そうだねーー。ヒーローになろうね…。」
菊太郎は…洗脳されてしまうのだろうか??

菊太郎あやうし!!
しかし、なんと言っても、
聞こえてくるボリュームが小さかった。
耳栓しているし。

心地いいのだが、
すべてを受け入れているわけではなかった。
菊太郎のアイデンティティが、
崩壊するまでは至らなかったのだ。

そうなのだ。菊太郎の思いついた、
ヒーロー洗脳ヘッドホンは、
「ヒーローになりたい」者にしか効かないのだ。
顔つきがヒーローに似ていた、
南光○郎に似た男(ブラック)と海○剛に似た男(レッド)は、
人相学からして、
やはりヒーローになりたかったのだろう。

が…違う言葉で言えば、『ブラック』と『レッド』は、
とても単純なやつのかもしれない。

女になった?菊太郎であったが、
心はやはり男のままのようだ。
耳栓があるとはいえ、漏れてくる音に、
少し、洗脳されたようである。

コースが終了し、ヘッドホンがはずされる。
「総統閣下ばんざーーい。」
「はははは。キーちゃん。おっと、『イエロー』…。
どうじゃな。今の気分は。」
「はい。正義のために戦いたい気分です。総統閣下。」
と、かわいい返事が返ってきた。

「ははははは。洗脳は完了したようじゃな。
あれだけ抵抗していたキー…
おっと、『イエロー』がうそみたいじゃ。
まあ、あれはあれで、かわいかったのじゃが…
まっ、3人の輪に加わって祈っていなさい。」
「はい。総統閣下。」
と、菊太郎『イエロー』は、
『ブラック』『レッド』『ピンク』の後ろに、
割って入って、
両手をあげたりおろしたりしながら、
「おれたちがヒーローだ。おれたちがヒーローだ…。」
と、ぐるぐるとさらに少し大きな円を描きながら、
叫び歩き回った。

その姿を見て、安心したのか、
大河原院長は、
一緒についてきた親衛隊と一緒に去っていった。
「さー次は、『グリーン』の手術じゃなーー。
それとも、あきらめて、
別のやつ改造するかのぅ…うーーん。いそがしいのぅ。」
そして…大河原院長の姿は見えなくなっていった。

「大丈夫??キーちゃん??」
モモは、菊太郎の手を引いて怪しい列から脱退した。
『レッド』『ブラック』は、相変わらず、
二人でぐるぐる回っていた。

が…菊太郎の様子が少しおかしい。
「おれたちがヒーローだ。おれたちがヒーローだ…。」
と、ぶつぶつしゃべっているのだ。
「しっかりしなさい。」
と、モモが往復ビンタを菊太郎におみまいした。

「はっ…ぼっぼくは…。」
菊太郎は正気に返った。
「もーーう。女の子でしょ??ボクって返事したけど、
君はオトコノコの心持っているとでもいうの??
ヒーローに洗脳されたの??大丈夫なの??」
「だっだいじょうぶ…れす。」
ほっぺたが、少し赤くはれていた…。
(モモの力とはいえ、普通の人だったら、
重傷負うくらいの力だとおもうのだが…。)

というわけで、耳栓がよかったのか??
女の子になっていたのがよかったのか??
菊太郎は洗脳されずに、すんだみたいだった。

「よかったーーーー。」
モモは、菊太郎をぎゅっと抱きしめた。
「あーーーーっ。」
菊太郎は、ちっょぴり…うれしかった。

「これで味方が増えたわ。しばらく様子見て、
きちんとしたことがわかったら、おねがい…。
院長たちと…戦うのよ。」

って…普通なら、「逃げ出すのよ。」とか、
いうとこなんだろう。
モモにはヒーローの血は、
流れていなかったかもしれない。
だから、洗脳されなかったのだが、
だけど、熱い『なにか』は、
あるようである。
それって、もしかしたら、
ヒロインの血なのだろうか??
(って、ヒーローの血と、ヒロインの血は、
どう違うんだろうか…。)

小一時間たった。
『グリーン』のことが一段落したのだろうか??
大河原院長が、戻ってきた。
足音に気がついて、
モモと菊太郎は、あわてて『ブラック』『レッド』の、
輪に戻って、
「おれたちがヒーローだ。おれたちがヒーローだ…。」
と、やるのだった。
それにしても、『ブラック』『レッド』は、
息が上がらないのだろうか???
いや、だからこその改造人間なんだろうか??

「回るのやめーー。」
院長が一声あげると、『ブラック』『レッド』は、
その場にぴたっと止まった。
『ピンク』と『イエロー』も、あわてて止まった。
…よかった、それだけのことでは、
ばれていないようである。

「今日は、ここまでじゃ…。
明日から、『特訓』はじめるでのぅ。
部屋でゆっくりと、するがよい…。」
大河原院長は、『グリーン』のことは、
未解決であったものの、他のメンバーの、
洗脳作業が、一応ちゃんと終わったと思っていたので、
上機嫌であった。
そして、研究室の奥の「プライベートルーム」に、
男女別に部屋へ案内された。

「お前たちは、しばらくの間、この部屋を使うがよいぞ。
ほっほっほっ…。」

「ありがとうございます。『総統閣下。』」
と、口では、言っているものの、
背中をみせて、ペロッとしただす二人であった。

しかし…、改めて部屋を見ると、
「うぉーーーーー…なっなんだ…この部屋…。」
と、思わず、声がこぼれる、菊太郎…。
女性『二人』には、
なっなんと、スィートルームみたいな部屋が与えられた。
まるでホテルである。

大河原院長が、
「女性の部屋は、少しは立派にしてあげなくてはのぅ。」
と、勝手に思い込んで作った部屋だったのだが、
なんせ、思い浮かぶのは、テレビで見ていた、
どこぞのホテルのスイートルームしかないのである。
「とほほほ…、だけど女性はいろいろと、
気をつかってやらないといけないでのぅ…。」

…恐ろしく、金がかかったらしい。
で、一応言っておくと、『男部屋』だって、
そんなに悪い部屋ではないことを一応、説明しておく。

が…菊太郎には違った試練??
いや??喜びなのか??
…はい、みなさんお待ちかねのシーンが待っていた。
(ぉぃっ…)
そう。女としての試練??である。

「とってもいい部屋ねー。
二人だけだし、くつろぎましょうよ。」
そういうと、モモは、菊太郎の目の前で、
いきなり来ている服を脱いで着替えたのだ。

「え??」いきなり顔を赤らめる菊太郎。
「何、顔を赤らめているのよ。女の子同士、
なんも遠慮いらないじゃない。」
そうなのである。
今まで、改造されたことそのものに、
怒りや戸惑いを感じていたのだが、
今現在、女にされたことの試練??
が訪れたのである。
『実は男だったんだけど、
改造されて女にされたのです。』
ううん。こんなこと。言えるものか…恥ずかしい…。
どうしようと、戸惑う菊太郎であった。

同室者の着替えの次は、いよいよ??本命??
の悩みである。
急に尿意をもよおしてきたのだった。
改造人間とはいえ、
そこは人間の営みを強いられたのである。

そして、おトイレに入って、
「あーーっない…。」
そうだった…。ない…のである。

重要なことに気がついたのである。
眠らされていた間は、カテーテルと言う管を通して、
おしっこをしていたのだが、
意識がはっきりしてから、初めての尿意であった。

どうしていいかわからない??
どうやってだすんだろう??
かといって、モモに聞くわけにはいかない。
ええい…体の力をゆるめる。

結果…あたり一面『みずびたし』となってしまった。

モモから、かんかんに怒られた。
はあ…目の前が真っ暗になった。

「なにやってんのよ!!
こっちで体きれいにしてらっしゃい。」
お風呂にすぐさま、追いやられてしまった。
と…、そこで初めて自分の顔と体を、
鏡で見ることとなった。

「か…かわいい…。」
もともと、素材がよかったのか??
手術がよかったのか??
ム○シ隊員というか、杉○太陽似の顔は、
すっかりかわいらしくなっていたのだった。
(いや、杉浦○陽似だからこそ…、
女の子にしても、
かわいい顔になると思うのですが…。…ぉぃぉぃ。)

「これがボク…これが今のボクなんだ…。」
裸の自分に、すっかり見とれてしまっていた。
いろいろセクシーなポーズとってみたり、

「あーーーーーーんっ…。」
声をだしてみたり…、
ここでは書けないようなこともしてみたり…。(ぉぃっ)

なのに…、いままで一番刺激を受けやすかった部分が、
反応をしめさない…。
そうだろう…切り取られなくなったのだから。
そのことにしても、なんか倒錯の世界であった。
「あああーー…。」

自分に酔う。まさにそれであった。

いつしか、自分の体のあちこちが、
感じる体に変わっていたのだった…。
そして…、感じるところを、
くねくねと触りまくるのであった…。
上のふくらみも、
下のあのあたりも…丹念にである。
「あっあーーーーーーーーーーーーっん。
女の体が…こんなにも…、気持ちいいなんて…。」

その声は、聞いている男を悩ますような、
とても、とても、色気ある声だった…。

「いつまで、入ってるのよーー。
もーーう。おトイレ掃除、人にさせといて…、
まったくーー。なんて娘(こ)よーー。」
いつまでも、お風呂から上がってこない菊太郎に、
イライラするモモであった。

で…、文句言おうと…、お風呂に近づくと、
なにやら、妖しい声が聞こえてくるのである。

何やっているか、すぐに、ピーンと来た、
モモは、怒って、お風呂の戸を開けた。
「キーちゃん!!!なにやっているのよ。
しんじらんない!!」
モモが風呂場に入ってきた。

「あーーーーーーーん…。 えーーーーーー!!!」
菊太郎は、やっと…、われに返った。

「しんじらんない…。ひとりで白昼堂々とまあ…。」
(いや…夜ですけど…。)

「……。」

菊太郎は、とーーーーーーっても、恥ずかしくなった。
見る見るうちに、真っ赤なトマトが、
熟成していくようであった。

「女の体がこんなにも、気持ちいい??」
それって、あなた、
いきなり女の子になったとでも言うわけ??」
はい。感のいいモモである。すべてがばれてしまった。

菊太郎は、どうしようもなく、
男だったことを、白状してしまったのだ。

「洗脳のことにしても、
私の着替えを見た君の反応にしても、
おトイレのことにしても、
自分に見とれている、
そして、さわりまくって感じている、
今のことにしても、
あの医者が改造手術を施したのは、
パワーの点だけじゃ、なかったってわけね。」

「はい…おねーさま…。」

「声と姿は、女の子そのものなのにね…。
もとは、本当に男の子だったのね。
というか、心はまったく男そのものなのよね。
うんうん。かわいそう。

でもこうなったら、しかたないじゃない。
とことんかわいい女の子になってね。
私が特訓してあげるからね。
いろんなこと…おしえてあげるからね…。」
ぎゅっと抱きしめられた。
…いや、そのまましばらく抱きしめられた…。
モモも、なんか、しばらく抱きしめていて、
あげたい…、そんな気分になっていた。

「おっおねーさま…。」

「おねーさま…、いい…ひびきね…。もっと言って…。」

「おねーさま…。あーーっおねーさま…。」
モモは、ただ抱きしめているだけであった。
そして、かわいい菊太郎の言葉に…、
なにか酔いしれていた。

「レ○プレイ」など、しなくても…、
ただ、それだけでなにか、
ジーーんとした気持ちになっていた。

おねーさまとして、
なにかしてあげなくてはいけないような、
おねーさまとして、
なんか、守ってあげなくてはいけないような、
おねーさまとして、
なにかおしえてあげなくてはいけないような、
そんな気分を、満足している気分だった。

菊太郎の顔が一段と、熟れたようであった。

黙っておくことなんてなかったんだ…。
おねーさま…。
ありがとう…。

「あーーーーーーーーーっ…。」
今までにない、最高の夜であった…?????

そして次の日からは、いよいよ『特訓』である。

女性『二人』はセンスのない赤いジャージ。
男性二人はセンスのない青いジャージを着るように、
命じられたのだ。

「だっさーーーーー。」モモは、菊太郎の顔を見た。
だけど、洗脳されていないことが、ばれてはいけない。
「そっ総統閣下…ありがとうございます…。
だっだけど…、もっとかわいい服にしてください…。」
モモが、少しぶりっ子して、大河原院長に頼み込んだ。
しかし、×サインをだして、聞き入れてくれなかった。

「俺…いや、わたしからもおねがいですーー。」
菊太郎が、かわいい声で、続けてお願いした。
「うーーん。考えておこうかのぅ…。」
大河原院長は、あっさりと手のひらを返したのだ。
「む!!」
モモは、無意識に、菊太郎に『嫉妬光線』を投げかけた。
「おっ…おねーさまの顔…こわい…。」
菊太郎は、このとき初めて、
モモに妬まれてしまったのだった…。
だけど、そのときだけで、
あとはそれまでの、モモに戻るのであった。

『特訓』が始まった。改造手術されたせいか、
体はとっても、身軽な感じがした。
(って、改造されたからに決まっているが…。)

2mジャンプしたり、空中前転したりと、
今までの自分からは、
とても想像できないような力を、身につけたのである。

そして、そういったことが、よりうまくできるように、
院長自ら見守る中、『特訓』は毎日続いたのだった。

「そうじゃ、そうじゃ、その調子で、がんばってくれれば、
いいんじゃー。ほっほっほっほっ。今日も終了じゃー。」
大河原院長は、とても満足げで帰っていった。

『特訓』は、オーバーワークになるまで、
きついものではなかった。

「こきつかって、ボロボロになってしまっては、
元も子もないからのう…。適度な運動が、一番じゃ。」

…まった。
そういうの特訓って言うか??
普通の訓練だろ??
まー、しかしそこは、
院長が『特訓』と言っているのだから、
付き合ってあげよーじゃないか。(ぉぃぉぃぉぃ)

食事とか、いやおやつまでも、
豪華なものであったし、
部屋の娯楽施設も充実していた。
(もっとも、洗脳されいた、男たちは、
使った形跡が、なかったのだが。)

さらには、洗脳が効いていると思っているためか、
ここのセキュリティーは、
ぜんぜん厳しくなかったのである。
カメラ等による、監視はされていないし、
のびのびと、過ごすことができた。
(いや…本当は、この部屋には、
盗聴マイクが仕掛けられていたんですが、
院長も知りません。後のストーリーとも、
ほとんど関係ありません。
…って、なんやーーそら!!!!!)

それまでの待遇が、うそのようにすばらしいものであった。

こうして考えると、
大河原院長も、味方になってくれたら、
とってもいい人なのかもしれない??

ただ、洗脳されたふりしているので、
朝からは、院長の許しが出るまで、
『ブラック』『レッド』、そして『ピンク』と一緒に、
「おれたちがヒーローだ。おれたちがヒーローだ…。」
と、ぐるぐる回らなくてはいけないのが、
ちょっと(いや、相当)、抵抗があったのだが、
『アフター5』は、ここでの暮らしも、
悪いものではなかった。
…って、『特訓』って、5時までかい!!

モモは、菊太郎のことを女の子として、
いや、それ以上に??
きちんと接してくれた。
そして女の子としての『特訓』も始まったのだ。

おトイレのこととか、服装のこととか、
最低限のことだけは、
いや、モモの趣味で、
しんせつに…、
ていねいに…、
とことん…、
しっかりと…、
かくじつに…、(しつこい!!)
学ばされたのであった。

「だめだめだめだめ。もーーう。
キーちゃんったら…。
ただ身につければ、
いいってもんじゃないわよ。
ブラは、こうやって、体まげてフック止めて…、
そして、バストをこう…、もーーう。
なに感じているのよーー。
だけど…かわぃぃ…キーちゃん。」
また…抱きしめるモモであった。

まったく…。何やっているんだか。

…もっと学ばなければいけないこと…、
ないのかい??

「いろいろあったけど、女の子もいいかも…。」
いきなし、なにもかも女の子になることはなかったが、
男の心が、
少しずつ変わっているのは、確かなことであろう。
(ほんとうに??)

今後が楽しみ????である。

…つづく…